【お箸の練習、まだしなくていいかもしれません】

輝きベビーアカデミー代表の伊藤美佳です。
昨日のメールでは、
子どもの「食べる力」は、
食事の時間だけで育っているわけではない
というお話をしました。
そして最後に、
子どもの発達は、全部つながっている
とお伝えしました。
今日は、その続きです。
「そろそろお箸を持たせた方がいいですか?」
「何度教えても、変な持ち方になるんです」
「うちの子、手先が不器用なんでしょうか?」
こんなご相談をいただくことがあります。
周りのお子さんがお箸を使い始めると、
「うちも練習させなくちゃ」
と思うこともありますよね。
でも私は、
お箸がうまく持てない時ほど、
お箸だけを一生懸命練習しなくてもいい
と思っています。
なぜなら、
お箸を使うために必要なのは、
指先の器用さだけではないからです。
姿勢を保つ。
肩や腕を安定させる。
手首を動かす。
指をそれぞれ動かす。
そして、
見ているものに合わせて
手を動かす。
実はいろいろな力が組み合わさって、
初めてお箸が使えるんですね。
ですから、
「お箸が持てない」
という結果だけを見るのではなく、
私はその前に、
この子は普段、どんなふうに手や身体を使っているのかな?
と見ます。
例えば、
つまむ。
握る。
引っ張る。
ねじる。
ちぎる。
丸める。
穴に入れる。
スプーンですくう。
容器から容器へ移す。
こんな一見何でもない遊びが、
実はお箸につながっていきます。
洗濯ばさみをつまむ。
シールを剥がして貼る。
紙をビリビリ破る。
粘土をちぎったり丸めたりする。
小さなものをつまんで容器に入れる。
もちろん年齢や誤飲などの安全には
十分気をつけながらですが、
こうした経験を
たくさんさせてあげてほしいんです。
そして、もう一つ。
私は日常生活の中で手を使うことを
とても大切にしています。
ボタンを留める。
靴下を履く。
ファスナーを上げる。
お茶を注ぐ。
袋を開ける。
お手伝いをする。
でも……
これ、待っている大人の方が
大変なんですよね(笑)
忙しい朝に、
子どもが一生懸命ファスナーと格闘していたら、
「もう、貸して!」
とやってしまった方が早い。
私もその気持ちはよく分かります。
でも実は、
大人が「やってあげた方が早い」と思う時間こそ、
子どもが自分の身体を育てている時間
でもあるんです。
昨日お話しした「食べること」も同じです。
手づかみ食べでは、
食べ物を見つける。
手を伸ばす。
つかむ。
力を加減する。
口まで運ぶ。
口の位置に合わせる。
これだけのことをしています。
大人にとっては、
ただ手で食べているように見えても、
子どもの身体の中では
たくさんのことが起きているんですね。
だから、
「何歳になったから、これをやらせる」
だけで発達を見るのではなく、
「その前に必要な力は育っているかな?」
と見てほしいのです。
これは、お箸だけではありません。
鉛筆もそう。
ハサミもそう。
着替えもそう。
運動もそう。
食べることもそうです。
私たちはどうしても、
「できた・できない」
という結果を見てしまいます。
でも40年以上子どもたちを見てきて、
私が大切だと思っているのは、
「できない」の一つ前を見ること。
「どうしてできないの?」
ではなく、
「この子は今、どの力を育てている途中なんだろう?」
と考えてみる。
すると、
「不器用だから」
「遅れているから」
「やる気がないから」
と思っていたことが、
違って見えることがあります。
まだ必要な経験が
十分ではないだけかもしれない。
だったら、
叱る必要も、
無理に練習させる必要もありません。
今必要な経験を、
遊びや生活の中に増やしてあげればいい。
子どもの発達って、
本当に面白いんですよ。
一つのことだけが
単独で育っているわけではありません。
食べることも、
手を使うことも、
身体を動かすことも、
遊ぶことも、
自分でやってみることも、
全部つながっています。
だから今日、
お子さんが何かできないことがあったら、
すぐに教えようとする前に、
一度だけ、
「この一つ前には、どんな力が必要なんだろう?」
と考えてみてください。
見える景色が、
少し変わるかもしれません。
明日は、
「食事中に遊ぶ・立ち歩く。それって本当に“しつけ”の問題?」
についてお話ししますね。
それでは、また明日。
輝きベビーアカデミー
伊藤美佳
